2017年 企業経営理論 4問目

中小企業診断士試験問題より抜粋

中小企業診断士試験問題

 

日本企業は戦略的にM&Aを活用するようになっているが、M&Aよりも戦略的提携を選択する企業も多い。M&Aには、契約成立前の準備段階と交渉段階、成立後の統合段階でのさまざまな留意点がある。
日本企業のM&Aと戦略的提携に関する記述として、最も適切なものはどれか。


ア M&Aの準備段階では、当事者の持つ研究開発、生産、販売などの重複部分や競合関係の明確化が重要であり、統合段階でデューデリジェンス(duediligence)を開始して機能統合していく。

イ 異業種のM&Aには、基本的には、規模の経済と取引交渉力の増大というメリットがあり、業績不振の立て直しはできないが、自社の必要としない資源までも獲得してしまう恐れはない。

ウ 企業の独立性を維持できる戦略的提携は、パートナーが提携関係を裏切る可能性を最小化しつつ、提携による協力から得られる恩恵を最大限享受することが主な目的であり、企業の評判に悪影響が起こる可能性は、戦略的提携における裏切りのインセンティブを抑制できない。

エ 戦略的提携の目的が経済的な価値と希少性の追求にあっても、持続的な競争優位をもたらすとは限らないが、提携による業界内の新しいセグメントへの低コストでの参入は企業間の強みを補完する試みとなりうる。

オ 同業種のM&Aには、基本的には、範囲の経済と習熟効果の実現というメリットがあり、組織文化の調整のコストは必要であるが、統合のコストはかからない。

 

【用語】

◆規模の経済・・・一定期間での生産量が大きいほど、製品の単位当たりのコストが低下する効果のこと(『速修テキスト〈3〉企業経営理論〈2018年版〉』より)

◆範囲の経済・・・それぞれ単一の製品を別々の事業で生産・販売する場合の総費用の合計よりも、同時に生産・販売したときのほうが総費用が少なく、効率が良い場合に、「範囲の経済」が存在するという。(『速修テキスト〈3〉企業経営理論〈2018年版〉』より)

◆戦略的提携・・・2つもしくはそれ以上の独立した組織が、製品・サービスの開発、製造、販売などに関して協力すること。

【参考】戦略的提携、M&A

 

【選択肢】

ア・・・デューデリジェンスは、統合段階で始めるのではなく、契約締結前に行われるべきものであるので、間違い。

イ・・・異業種のM&Aの場合のメリットは、「規模の経済」ではなく、「範囲の経済」なので、間違い。

ウ・・・弱みとして、パートナーとの互恵関係の維持が難しい(裏切りの脅威)があり、間違い。

エ・・・正しい。

オ・・・同業種のM&Aのメリットは、「範囲の経済」ではなく、「規模の経済」であるので、間違い。